ニューバランスは1906年にマラソンの街としてよく知られているアメリカ ボストンでイギリス人の” ウィリアム・J・ライリー”によって創業された。 今でこそスニーカーブランドとして確立された地位を築いているニューバランスだが、創業時から約50年の間は今とは違って、整形外科で使われている扁平足を治すための矯正靴や、かかとから土踏まずまでを支えているアーチ状の部分を補佐するアーチサポートといった、いわば医療的な目的を主とした製品を製造する会社だった。
ニューバランスという社名の由来は、 履いた人に新しい(NEW) バランス(BALANCE)感覚をもたらすという意味で名付けられた。 1930年代には、カスタムメイドのランニングシューズの製造を開始する。
1960年代になるとそれまで半世紀もの間培ってきた、医療的な目的で使用できるほどの専門技術をランニングシューズにも活用することを始めた。 特にインステップレーシング(足に負担の少ない自然な形状のスニーカー)や、足のサイズを測る時に縦の長さだけを測ることが今でも当たり前だが、長さだけでなく横幅も測る”ワイズサイジング”を考案した。 このワイズサイジングは今でもニューバランスのサイズ選択の基本でもある。 これらの様々な画期的な発想により、従来よりもさらに足に優しく、最高のフィット感を実現することに成功した。
1970年ごろ当時、1日に40足前後を製造することがやっとだったニューバランスを ”ジェームス・S・デービス” という人物が買収したことによって、それまでにはなかったグローバル戦略を取り入れた経営手法で、飛躍的な成長を遂げていくこととなる。
1970年代には、ランニング用具のレビューやマラソン、レースのためのトレーニング法など、総合的なランナーのための情報が詰まったアメリカの権威ある雑誌である ”ランナーズワールド” の5つ星を獲得した”320” など、多くの名作を輩出。 その後は、最高のハイテクノロジーを搭載した、”1300” から始まるプレステージシリーズなどを発売させ、元々医療的な靴を作っていたノウハウを最大限に生かした最高品スニーカーを数多く生み出していく。
他のスニーカーブランドとは一線を画すその卓越した技術で作られるニューバランスのスニーカーが素晴らしい履き心地を提供してくれることを上手く表した話で、アパレルメーカー ポロラルフローレンの創業者ラルフローレンが “M1300(1985年)”を履いた際に「雲の上を歩いているようなスニーカーだ」と絶賛したことがあるほど、そのパフォーマンスには数多くの人が感心するほどである。
1988年、アッパー部分にレザーを使用するという今までにないファッショナブルなモデルを発表したことで、スポーツ業界だけでなくファッション業界からも注目されるようになる。 そして、何よりも”履き心地”を優先する大人のイメージと、”この世で最も足を知っているスニーカー”と形容されるほどの高い技術を持ったスニーカーブランドとして、スポーツ界とファッション界からの確固たる地位を築いていくこととなる。