スニーカーヘッズはもちろん、ヘッズではない人たちにもよく知られており、ニューバランスと聞いたときに、多くの人が初めに頭をよぎるであろう歴史的名作がこの”M1300”である。
登場したのは1985年で、ランニングシューズとしては最高額の”3万9000円”という価格で発売された。 このスニーカーの良さを語る上でわかりやすい話があり、当時ファッション業界で最も影響力のあったラルフローレンがM1300を履いたときに、”まるで雲の上を歩いているようだ”と大絶賛し、その履き心地の良さから”スニーカー界のロールスロイス”と形容されるほどである。
ニューバランスのスニーカーは数字によって種類分けされており、”300番代はエントリーモデル” ”500番代はトレイルランニング(オフロード)モデル” ”990番代はロードランニング(平らな道)モデル” ”1000番代なら高機能モデル”というように種類分けがされており、”当時初めての1000番代”として満を辞してリリースされたのがこのスニーカーでもある。
当時のスニーカー相場から考えると高価で、平均して3倍から4倍ほどであったっことも驚くべきことであるが、”スニーカーを履くのは若者”という当時の固定概念を覆し、”大人のためのスニーカー”という全く新しい価値観をスニーカーカルチャーに持ち込んだ事こそがこのスニーカーが世界を驚かせた理由でもある。
ソールユニットにはニューバランスが誇る衝撃吸収性能と安定性を両立させた”ENCAP(エンキャップ)”の機能を初搭載し、着地時の足の衝撃を吸収するクッション素材”ABZORB(アブソーブ)”を採用するなど、元々矯正靴を製造していたニューバランスが持つ、足に優しいテクノロジーをいち早く搭載したことで、世界で一番気持ちの良い履き心地を誇るスニーカーが誕生した。
さらに驚かされるのは、スニーカーの中では群を抜いて高価なスニーカーのはずなのに、一度M1300を履いたユーザーの多くは次々とニューモデルを買い続けている。 その理由は単純でニューバランスが誇る履き心地の良さの虜になってしまうからである。
ニューバランスは”F−1”に例えられることがあるが、これは的を得たとてもわかりやすい表現で、履きやすさのためには妥協を許さない姿勢、そして高性能モデルである1000番代の虜になったヘビーユーザーは、まさにタイヤを取り替えるかのように、当然の如くインソールの取り替えを行うからである。
一時は生産終了となったが、熱い支持を受け米国内での定番品として復刻されたのが”M1300CL”。初版の”M1300"と区別するためにCL(クラシック)という文字が品番に組み込まれている。
この二種類のM1300では少し違いがあり、初版の”M1300”はミッドソールの全面がENCAP構造であるのに対し、復刻版の”M1300CL”は、ヒール部分にのみENCAP構造を搭載し、前部分には軽量かつ加水分解しにくいEVA素材を圧縮しクッション性と耐久性を向上させたCーCAP素材を採用することで、屈曲性が上がりさらに快適な履き心地を追求したものになっている。
履き心地という基準でスニーカーを選ぶなら、確実に上位争いに食い込むであろうM1300だが、”メイドインUSA”は更にスニーカーヘッズの興味をくすぐるものとなっている。
履く者たちをことごとく虜にしていくスニーカー界のロールスロイス、その完成された性能もさることながら、ファッショ二スタたちも魅了する飾らない見た目の良さで、発売から数十年がたった今でも、世代・性別・業界を問わず多くの人たちに愛され続けているスニーカーである。
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